脳幹機能障害。
脳幹の機能
①呼吸、循環、嘔吐、嚥下、対光反射など生命維持に必要な機能の中枢。
②脳神経の神経核がある。
③求心路、遠心路の神経の通り道。
施設では2名、離断術を行っている。
術後良好で劇的な効果が見られている。
具体的にあげると、機嫌の悪い日が多かったが笑顔が見られるようになった、
食欲が亢進し食事量が劇的にアップした、表情が豊かになった、など。
脳梁とは左右にある大脳をつなぐ繊維束である。
それを切り離すことにより、一方で発生した異常電気発作を
もう片方へ伝わらないようにし発作の緩和を図る。
全脳梁離断術と、前方2/3を離断する術式がある。
3週間程度の入院で術後、離断症状として意識レベルの低下、呼吸状態の悪化、
嚥下機能の悪化が見られ、それらが改善した後にICU退室となる。
脳波、頭部MRI、神経心理検査などの状況を見ながら1−2年後から抗てんかん薬の減薬を行う。
*神経心理検査:
施設では二人実施しており、両者ともに劇的な改善が見られている。Aくんは発作を抑制するために多量の抗けいれん薬を内服しており一日中傾眠傾向で覚醒時は泣いている、という状態であったが、ACTH療法後はほとんど開眼しており、経口摂取が可能になったり笑顔が時折見られることもある。
では、そのACTH療法とは。
ウエスト症候群に対して多量にステロイドを筋肉注射にて投与する、という治療。最初の2週間は連続投与するがその後漸減させていく。副作用としては、易刺激性、無表情、睡眠障害、食欲亢進などがあるが出現することは稀である。
機序:副腎皮質刺激ホルモンを投与することにより副腎からステロイドを分泌させ脳波を落ち着かせる。
1ヶ月程度の入院期間が必要である。
二分脊椎は神経の先天奇形であり、脊髄髄膜瘤(脊髄披裂)と潜在性二分脊椎があるが、施設にいるのは重症の方の脊髄髄膜瘤である。原因は不明であるが母体の葉酸欠乏が関与していると考えられている。
出生時に皮膚、髄膜の欠損、脊髄の露出が見られるため出生後、脊髄再建、皮膚欠損部の閉鎖、整復術を受けるため、A子ちゃんは尾骨部に手術痕がある。
症状は病変以下の運動麻痺と反射消失、感覚障害、足の変形、膀胱直腸障害、知能障害があり、水頭症の併発もあるのでVPシャントも入れている。施設が実施している医療ケアとしては、導尿、仙骨尾骨部の皮膚トラブル管理である。
*神経因性膀胱→適切な排尿管理により腎機能の低下を防ぐ(便秘薬に高マグネシウム血症を起こさないモビコールを内服。水腎症の既往あり)
*直腸障害
*褥瘡
*てんかん発作
施設に一名。症例数が少なく何が起こるかわからないため体調不良があればすぐに帰宅。元気そうに見えても翌日入院と、本人は一見とっても元気そうに見えるのに
ダンディーウォーカー症候群:
中枢神経系の先天的形成異常で水頭症、精神発達遅滞、全身の様々な奇形を合併する。
①小脳虫部の形成不全(小脳:四肢、体幹の動きの調節や平衡、眼球運動の調節に関わる。)
②第4脳室の拡大(脳室:脳の内部にある4つの空間。脈絡叢という脳脊髄液を産生、分泌する部分があり髄液で満たされている。第4脳室:小脳の前方に存在する)
③後頭蓋窩の拡大
水頭症:髄液が頭蓋内腔に過剰に貯留した状態。脳室の拡大、頭蓋内圧亢進、脳実質の圧迫などが見られる。ダンディーウォーカー症候群の場合、脳室からくも膜下腔へ髄液が排出されずに脳室が拡大している、たぶん。
VーPシャント
水頭症に対して、脳室ー腹腔に短絡路を作り髄液を排出する。最も一般的に施行されている。脳室内にチューブを挿入し、圧可変式バルブにつなぎ、腹腔内につながるチューブから髄液を排出する。髄液は腹腔内から吸収され循環へ戻っていく。約1時間の手術。
*合併症:シャント機能不全(シャントの閉塞、断裂、逸脱により頭蓋内圧の亢進、脳ヘルニアのリスク)、シャント感染、髄液の過剰排出(低頭蓋内圧症候群、その他あり)、その他(腸管穿孔、腹水、陰嚢水腫)
*日常の注意点:体を激しくひねる、頭部をぶつけるなど。また、圧可変式バルブにて排出圧を調整しているため、磁気〇〇(枕、マットなど)は使用しない、電子レンジ、冷蔵庫、ヘッドホン、携帯電話、磁気を利用したものを近づけない。
頭蓋内圧亢進
頭蓋内圧が病変、脳実質や脳室の容積増大によって亢進すること。頭蓋内圧の上昇を放置すれば脳ヘルニアに移行する危険があるため、早期の対応が重要である。
*症状:激しい頭痛、悪心、嘔吐。クッシング現象(徐脈、血圧上昇)、意識障害、網膜出血、散瞳、けいれん。
気管切開、人工呼吸器管理の子どもは呼吸困難に陥ることが時折ある。
子どもによっては呼吸困難が珍しくなくなり、スタッフが安易な判断を下しがちであるが、呼吸困難は心停止に至る症状であることを再認識しなければならない。
呼吸困難時、というかある症状が現れたときはいつでも、それが緊急性のあるものなのかどうかを判断することがまず大事である。
★判断のポイント
・いつからどのくらい続いているのか
・苦悶様表情
・発汗
・チアノーゼ
・末梢冷感
・SpO2、心拍数、呼吸数
・努力呼吸
・意識レベル
・顔面蒼白
・呼吸音左右差
・気管カニューレの適切な装着
原因は、痰の貯留、気管カニューレの閉塞・抜去、暑さ、パニック、誤嚥が多く、可能性があるものとして気胸があげられる。どの原因であるかを考えながらケアにあたっていく。
・喘鳴
・呼吸音(左右差)
・呼気、吸気の延長
・胸郭の動き
・表情、発汗
・吸引チューブがスムーズに通過するか
★痰の貯留の場合
吸引、体位ドレナージ、吸入、酸素流量アップ、アンビュー換気、体液の是正。
★気管カニューレの閉塞・抜去の場合
吸引で開通不可ならば、再挿入。
・カニューレの装着
★パニック場合。というか、呼吸になれば誰でもパニックになる。ので、
・安楽な体位を工夫して不必要な酸素消費を減らす。
・呼吸は大脳皮質でも調節しているので、声掛けやマッサージ、側にいる、温度の調節などリラックスできる状況を提供して落ち着けるように工夫する。